神待ち女性 黒羽幸宏 書評

・この本はどういうことを扱っているのか

著者の長年の取材によって、「神待ち女性」が置かれてきた劣悪な環境と、彼女達が「神」と呼ぶ卑劣な男たちの本性が暴かれていくさまが描かれています。

 

何不自由ない生活を送ってきた自分にとっては、その内容は衝撃的でした。救いの手立てが無いので、ドラマにもなれない。

 

幼少期から家庭に問題を抱えた女性達が、
どのように外の世界へ逃げ出したのか……そして、どう生き抜いてきたのかがうかがえる、風俗ライター黒羽幸宏さんが綴った全てノンフィクションの内容です。

 

・本の意図はどのようなところにあるのか

まず、焦点が「女性達がなぜ神を求めるのか」という部分に充てられています。家庭環境があまりにもひどく、食事さえままならなかなったような女性や親との信頼関係の構築が出来なかった女性など、神待ちをしている女性の生い立ちは様々。

女子高生や、それよりも若い女性が一人で社会に出て、生きていくためにはお金が必要です。合法的に働ける場所が無いため、鬼畜男達に利用される形になってしまったとしてもお金を得るために神待ちをする……。

「体を求めてこない神」

はそう存在しないのだが、それでもどうして神待ちをするに至ったのか、という経緯につなげて展開しています。想像も出来ない現実だけれど、日本社会に実在する闇としてしっかりと把握することが出来ると共に、
より多くの人にこの現実を知ってもらいたいという筆者の意識が
はっきりと伝わってきます。

 

・本の筆者が最もいいたかった点について

神待ちをする女性たちには、絶対的に愛情が欠如しています。求めている父親や母親がいない、愛情を十分に注がれたことの無い彼女たちにとって、ほんの一時だけでも頼れる存在なのが、神。

家庭という第一に接する社会への絶望感と、誰かに認められたいという欲求とが入り混じり、男性達に身を委ねてしまうのではないかという推測が本書の最後につづられています。また、神待ちを受け入れる男性たちも同じ。

彼らの人生には愛情が欠落しています。父親として頼られる気分を一瞬味わっているのではないか、というのです。食事や身の回りの世話をしてもらう代わりに体を捧げる女たち。お金と時間と場所を提供してあげる対価としてカラダを求める男たち。

本当の愛とは、見返りを求めずにただ「与える」もの。それを知らない男女が、滑稽に不器用に……非合法的なつながりを求め合っているという悲惨な現状を説明してくれているのです。

 

・特に注意して読むべき部分

女性達一人ひとりにスポットを当てて、彼女らがここまで至った経緯、どういった考えの元に行動しているのかといったエピソードが随所につづられています。

神待ち女性へのインタビューということで、警戒心を解きながらやりとりする筆者の苦労も見えるような校正になっています。

自分の知らなかった世界を覗き見させてもらうような、好奇心をくすぐる内容もあります。そして、知られざる日本社会の実態を知ることが出来、なんだか胸がザワザワするはずです。

 

・自分が面白いと感じた箇所

女性側のみにインタビューを繰り返している訳ではなく、神と崇められた男性達にも取材を行なっているところに好感を持ちました。

神とは名ばかりで、やっていることは間違いなく鬼畜ですし外道。その部分をストレートに切り込まれ、開き直る男性のコメントがなんともいえません。

ショックでもあったり、やっぱりな……と失望感を覚えたり。神待ちしている女子の本音ばかり書いているということではなく、禁忌を犯した男性達のリアルな目線で物事が語られているのに面白みを感じました。

 

・自分がこの内容は本を語る上で欠かせない点だと感じた箇所

家出女性達がその日泊まる場所がなくて助けを求め、またその子達をタダで泊めてあげるよという男側の意思を表示する場として家出掲示板が紹介されています。

更に、未成年者であるにも関わらず売春、しっていて買春するという行為についても触れられています。糞尿を売りさばいてお金にしている子もいるという性産業そのものの腐敗に触れられている点がこの本には欠かせません。

AVの中の世界と、リアルな今とを混同し、弱みを握り合って相手が欲しているものを提供しあう世界。

こんな希薄な繋がりに賭けて生きていく女性達を取り巻く日本社会全体を考えていく必要があると感じさせられました。


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